【オフィシャルインタビュー】ヴァッシュ・ザ・スタンピード役 松岡禎丞

──前作『TRIGUN STAMPEDE』は国内外で大きな反響を呼びましたが、松岡さんは当時を振り返ってどのような思いがありますか。
挑戦の連続だったという印象が強いですね。『トライガン』という作品には、もともと90年代のアニメ版(1998年放送)があって、僕自身も見ていたので、『トライガン』の世界観が子どものころから大好きです。当時の『トライガン』を「超える・超えない」ということではなく、どちらの良さもあるんだという方向で視聴者の皆さまに観ていただきたいなという気持ちがありました。でもやはり、オリジナルのイメージが強く残っているファンの方も多いので、最初はものすごく怖かったです。
──そうした想いを抱えながら演じていたヴァッシュは『TRIGUN STARGAZE』ではどのように映りましたか。
根本的な部分は変わっていません。ヴァッシュはすごく頑固で、今の自分の生き方を意地でも変えられない、みたいなところがある。でも『STARGAZE』のヴァッシュは、泣けるようになったし、ひとりで抱え込まず、少しでも人に甘えるようになっていて。それはヴァッシュにとって大きな変化だと思います。
──『STARGAZE』の冒頭、ヴァッシュはエリクスとして生活をしています。
原作を読んでいて展開を知ってはいましたが、いざお芝居をするとなったときに頭が混乱しました。「今、この世界線はどこなんだろう?」と感じる瞬間もありました。第2話で初めて“ヴァッシュとして”言葉を発しますが、あのときは「本当にどうしよう」と思うほど正解が分からなかったです。ヴァッシュとしても、身体的にも声帯が弱っているような状態なんじゃないかと。それをそのまま演じてしまうと、観ている人まで苦しくなってしまうんじゃないかな、という気持ちもありました。

──ホッパードから放たれる「生きて苦しめ」という言葉は、どのように受け止めていましたか。
あの言葉をかけられた時、ヴァッシュはまさにネガティブのピークにいた気がします。呪いの言葉ではありますよね。……だからこそ、死ねない。しかも「生きて苦しめ」といいますけど、ヴァッシュは今までずっと苦しんできたわけで。特にロストジュライの苦しみは想像を絶します。

──今作ではついにナイヴズとの決着が描かれます。
ヴァッシュの中では、最初はもうナイは死んだものになっていて。だから実は“生きている”と知った時は混乱したと思います。でも、ヴァッシュにとっては、たったひとりの兄弟なんだなと。自分が殺してしまったはずの兄が、もしかしたら生きてる可能性があるということに対して、驚愕はするけれど、少しの希望になってしまう。でも彼はどんな状況でも「自分は絶対に人を殺さない」と言い切っていますから。だからそこは……どうなるんでしょうね。

──ナイヴズに対して、松岡さん自身はどのように感じられていましたか。
もう行き着くところまで行ってしまった感じというか。もともと“人外”でしたけど、それに拍車がかかったような印象です。だからヴァッシュとナイの関係性も、前よりズレてしまったように感じています。以前はどこかにまだ“兄”としての優しさが見えていました。でも今回は完全に割り切っている。冷たくなったというんでしょうか。前はもっと、ちゃんと“兄弟”だったのになと……。
──物語の空気も前作以上に張り詰めていきますが、新たな仲間としてミリィが登場します。
彼女は能天気に見えますが、実はちゃんと考えている子で、興味のあること、質問したいことに対しては思いっきりまっすぐ、笑顔で飛び込んでいく。荒廃した世界の中でひとつの“太陽”のような存在に感じています。

──メリルもいよいよ先輩になりましたね。
「かなり成長したな」と思いました。話し方も表情も、迷いがなくなっていて、すごく頼もしくなった。……気のせいじゃなければ、プロポーションも良くなったように見えました(笑)。

──(笑)。では、ニコラスについてはどのように感じられていましたか。
ニコラスは変わらないですね。ただ、前よりずっと腹を割って話すようになった気がします。言いたいことは全部言うし、容赦なく突っ込む。だけどその中に“信頼”がある。前だったら「お前、遅いわボケ」なんて言わなかったんじゃないかなと。

──今作で特に印象に残ったキャラクターを挙げるとしたら?
やっぱりレガートです。今回は前作以上に“変態度”が上がっています(笑)。もう本当にすごいことになっていますよ。それに加えて、どこまで人間なんだろうって思うくらい、能力も異質で、エグいです。

──最後に『トライガン』がいまなお愛されている理由、ヴァッシュが愛されている理由について、松岡さんがどのように考えられているかを教えてください。
『トライガン』の魅力はやはり、この独特の世界観にあると思います。SFといえばSFですが、どこか身近で、誰が見てもすんなりとこの世界に入っていける感覚があります。それに加えて、物語の“かっこいいところ”はしっかりかっこよく見せつつ、シリアスな部分だけが重くなりすぎない。さらに、敵・味方を問わず、一人ひとりにきちんと物語があって、それを掘り下げていくことで、作品の中の誰かに必ず心が刺さるようになっている。一人ひとりが信念を持っています。そこが『トライガン』の大きな魅力じゃないかなと思います。
一方、ヴァッシュは“人間誰しもが持つ弱さや優しさ”を地で体現している存在で、観る人の心境によって受け止め方が変わると思います。「自分もこうありたい」「自分にはそんな力はないし」などと、いい意味でも悪い意味でも反面教師みたいに見えるところがある。それでも結局、ヴァッシュは“いいやつ”だから、無下に嫌いになれないんです。ヴァッシュを見ると頑張れる気がしています。そういう部分が、ヴァッシュがいまなお愛されている理由なんだと思います。